大判例

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東京高等裁判所 昭和31年(う)1338号 判決

被告人 橋本兼吉

〔抄 録〕

弁護人論旨第二点について。

医師林[日章]作成の鑑定書及び同人の原審公判廷に於ける供述並びに証人大竹武松の証言を綜合するに、被告人は昭和三十年三月十七日より同年四月十六日の間に於て松沢病院で林医師の診断を受けた事実はあるが、所論のように同年二月中既に拘禁反応の症状を呈していたとは認められないのみならず、被告人は同年二月二十八日逮捕され、翌三月一日大竹武松の取調を受けているが、当時被告人の精神状態についておかしいと思われる点はなかつたが、その後数日して拘禁性反応の精神症状に陥り、その状態が同年四月十六日当時も継続していたこと及びこの拘禁性反応の精神症状とは、拘禁を逃れ、審理尋問を避けようとする欲求が満されないための不安興奮を主たる原因として生ずるもので、搜査官に対し自己防衛の能力を欠き、不利益な供述を誘導されることは少いものと認められる。被告人の司法警察員に対する昭和三十年二月二十四日附及び同年三月一日附供述調書、検察官に対する同年三月二日附供述調書はいずれも被告人が前記症状を呈する以前に作成されたものであり、その内容からみても合理的な供述をしていることが認められ、異常な精神症状の影響を受けた供述とは認められない。又同年四月十六日附の検察官に対する供述調書は前記のとおり拘禁反応性精神症状の下に作成せられたものと認めなければならないのであるが、その内容をみると、火災前後の被告人の行動を詳細に陳述しているが、自己の犯行については搜査官に対する防衛能力があり、自己の犯行を告白しない決意の下に犯行以外の自己の行動を任意供述したものである。しかもそれが被告人の任意の供述をまたなければ作成できない内容のものと認められ、被告人が当時拘禁性反応の精神状態継続中であつたことによつてその供述の任意性を否定できない。それ故原判決がこれら各供述調書を証拠としたのは違法ではないから論旨は理由がない。

(加納 吉田作 山岸)

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